はじめに - 旅の心得 -

二子玉川公園・帰真園

ちょいとそこまで…な気軽さで地元の街を探ってみると、知らなかったことや見過ごしていたもの、意外と歴史的だったもの、そんな思いがけない発見もあって日常生活の場としてしか認識していなかった場所が新たな景色として見えてきます。

最近はマイクロツーリズムとか呼ばれるようになっていますが、お散歩とかカフェ巡りもその仲間でしょう。博物学的な面を付け加えると「ブラタモリ」、地域振興な面を付け加えると「アド街」などのテレビ番組になるのかもしれません。

古くは100年ほど前に起こった関東大震災の後、被災地の状況をスケッチして歩いた柳田民俗学の門下生だった今和次郎らが提唱した「社会のありとあらゆるものをありのままに記録し研究する」という趣旨から始まった学問「考現学」というのがありますが、これも街を楽しむためのひとつの考え方になりそうです。永井荷風の「断腸亭日乗」に代表される日記文学もその傍流にあたるのかもしれません。

1980年代には美術家の赤瀬川原平と建築史家の藤森照信らによって「路上観察学会」というムーブメントがありました。街に埋もれている建物・看板・張り紙・マンホールの蓋など普段は見過ごしているものを観察・鑑賞するというひとつのアート活動です。芸術家・学者・建築家・漫画家など広いジャンルの人々が賛同して、大きなムーブメントになりました。それ以前にもサブカル系の世界では70年代に創刊された雑誌「ワンダーランド」(「宝島」の前身)の投稿コーナーにVOW(View of Wonder)というのがあり、街の中の珍風景などを紹介して盛り上がっていました。

このように、街を楽しむにも色々な方向性があって、見方ひとつで人それぞれの楽しみ方ができます。

そんな「ご近所旅」をELLIPSEの地元である世田谷西部や多摩川対岸の川崎東部を歩きながら、発見したものやあらためて興味をそそられたものを、時代背景など少し深掘りしつつ紹介していきます。
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