静嘉堂緑地

旧小坂邸緑地から道ひとつ挟んで隣りにあるこちらは、三菱財閥の創設者・岩崎弥太郎の弟で二代目総裁・弥之助の没後、その子で四代目総裁になる小弥太によって岩崎家の納骨堂としてところで、その後、この親子が収集した古文書・古美術の保存公開を目的として文庫が立てられ、近年になってそれらを展示する美術館も建てられました。コレクションの中には数年前にテレビで話題になった曜変天目茶碗など国宝のものもあって、マニアには有名な美術館でしたが、昨年より展示機能は丸の内・明治生命館で行うとになり、保管管理場所としてのみになっています。

納骨堂の設計は今の東京大学工学部にあたる工部大学校で建築学の教師も勤め、日本の洋館設計に多大な影響を与えた英国の建築家ジョサイア・コンドル。明治の社交場として歴史の教科書にも載っている今はなき鹿鳴館も彼の設計です。現存する彼の設計建築物としてはこの納骨堂の他、御茶ノ水にあるニコライ堂(関東大震災の修復で一部デザインは変更されています。その際、修復を担当したのは大阪市中央公会堂や丸の内の明治生命館などを設計した岡田信一郎)、池之端にある旧岩崎邸庭園洋館、駒込の旧古河庭園洋館などです。三菱一号館も彼の設計ですが反対運動もされていましたが解体されてしまい、美術館として新たに造られたレプリカです。また、一般には非公開ですが、高輪にある三菱グループのサロンとして利用されている開東閣、三井グループのサロンである綱町三井倶楽部もコンドルの設計です。

静嘉堂文庫の建物はコンドルの指導を受け、英国留学もした桜井小太郎の設計。二階建ての鉄筋コンクリート造で外壁はスクラッチタイル貼りで、英国郊外にある住宅をイメージしたデザインとなっています。文庫内部は研究者向けの古文書図書館となっていて一般見学はできませんが、静嘉堂緑地の木々で世田谷の住宅地から隔離されていますので、古き英国にタイムスリップしたかのような気分を味わえます。今は美術館も丸の内に移ってしまったので訪れる人も少なくゆったりとこの世界に浸れます。ただし開園されているのが土日祝日休の平日9時30分~16時30分となっておりますのでご注意下さい。

静嘉堂緑地については世田谷区 Web

静嘉堂文庫美術館については
丸の内・静嘉堂文庫美術館 Web

ジョサイア・コンドルが日本の建築に及ぼした功績などは
国立国会図書館 Web
本の万華鏡「日本近代建築の夜明け」


静嘉堂緑地