岡本公園民家園で暦法を考える

 

岡本公園民家園に立ち寄ったら、生花は重陽の節句をお題で生けてあり、縁側には十三夜のお供えでススキや菊に団子や芋が飾られていました。

昔からの風習ですから旧暦での日付が本来となります。旧暦とは月の満ち欠けで日付が決めますが、それだけだと太陽の公転による季節と徐々にズレていくことから閏年・閏月など挟んで補正する太陰太陽暦です。
古来中国では奇数は陽数といって縁起が良い数字とされていました。季節の移ろいと合わせて節句という季節の節目となる日を祝うようになりました。1/7は人日(じんじつ)、3/3上巳(じょうし)、5/5端午(端午)、7/7(七夕)、9/9(重陽)が五節句です。

いまでも1/7は七草粥、3/3ひな祭り、5/5こどもの日、7/7たなばたで一般的に受け継がれていますが、9/9は少しマイナーな節句になっています。実りの秋にあたるので健康や長寿、成長を願って旬のものを食べてお祝いする日になっています。ちょうど旧暦でいうと菊が花咲く時期なので菊を生けたり、お酒に菊の花を浮かべたりして菊の日とも言われています。旧暦時代の季節感といまの暦(グレゴリオ暦)の季節感にズレがありますので、9/9をそのまま新暦に当てはめると、まだまだ夏の日で菊のシーズンではありません。それもあってマイナーになってしまったのかもしれません。

暦法がかわるとそういうズレがどうしても出てきます。7/7の七夕もいまは新暦に祝っているのが一般的ですが月の満ち欠けとはリンクしません。年によって満月だったりもするので夜通し月が昇っていて空が明るく星をみるには適さないこともあります。月の満ち欠けで決まる旧暦であれば7日は右半分が光る半月あたりなので昼間に東から昇ってきて夕方に南中、そして深夜には西の空に沈みますのでそこからは星だけの夜空になります。

赤穂浪士の討ち入り日も新暦にそのまま当てはめると違和感がでます。討ち入りは元禄15年12月14日、雪が降り止み空が晴れた深夜に討ち入ったと言われていますが、14日の月なので満月あたりになります。月明かりでそこそこ明るかったのではないでしょうか。季節感も現在のグレゴリオ暦でいうと1703年1月30日となりますので、東京に雪が降ってても違和感はありません。

そんなことを考えながら民家園の歴史ある古い建物で囲炉裏から漂う煙の匂いと縁側にやさしく差し込む秋の陽射しに包まれるのもいいものでした。

建物だけでなくこういった伝統的な生活風習なども季節に合わせて演出してくれる施設はリピートしても飽きが来ないので入場無料ですしお散歩には最適です。これからは木々の色の移ろいが楽しめる季節となります。
岡本公園民家園で暦法を考える