五島美術館

いままでご紹介した瀬田地区に一群となっている場所とは国道246を挟んだ反対側になりますが、ELLIPSEからは南に1.5kmほど行った上野毛エリアにある五島美術館は、東急を創業した五島慶太が収集した国宝「源氏物語絵巻」をはじめとする美術コレクションを保存展示している美術館です。かつての大東急時代のつながりで東急・京急・小田急・京王の出資により1960年に五島邸の敷地の一部を充てがって開館されました。建物の設計は日本の伝統的な寝殿造や数寄屋建築とモダニズム建築の融合ともいえる設計で名を馳せた吉田五十八で、ここをはじめ、成田山新勝寺本殿や奈良の大和文華館、expo1970の松下館などを設計しています。

内容はコレクションの一部を期間ごとにその都度、テーマに沿って入れ替えて展示しています。また、国分寺崖線の上に建てられて崖線の傾斜を生かした庭もかつての武蔵野の雑木林の風情を残し、鉄道事業で引き取った各地の石仏などが点在していていて、季節に応じてツツジやコブシの花も咲くのどかな空間となっています。訪れた時はお庭のお茶室で貸切のお茶会が開かれていました。

前回までで紹介したエリアとこちらはともに国分寺崖線という段丘の高台にあたる部分で富士山も景観できるところです。この美術館脇の東急大井町線を越える橋(富士見橋)から二子玉川のビルの間に今でも気象条件がよければ富士山が見えます。そういった景観に恵まれた場所であったことから古くは別邸地、いまでも高級住宅が崖の傾斜を活かして立ち並んでいます。

静嘉堂文庫エリアとこちらの距離も2kmほどなので、そういった凝った建築のお屋敷を眺めつつ、崖下に沿って流れている丸子川(江戸時代に遠く大田区の六郷まで農業用水として開削した六郷用水の跡)沿いに歩いて、建築&美術散歩もいいかもしれません。国分寺崖線や六郷用水についてはまた後日に紹介したいと思います。

五島美術館